ニホンジカは、名前に「ニホン」とついているが日本の固有種ではなく、極東ロシアや中国東北部、朝鮮半島、台湾からベトナムなどに至る東アジアに広く分布している。 ホンシュウジカやキュウシュウジカ、エゾジカなど、国内には幾つかのニホンジカの亜種が分布しているが、ヤクシカ(ヤクジカ)も国内に分布しているニホンジカの亜種のひとつとされている。
ヤクシカの分布域・生息環境 ヤクシカは鹿児島県・屋久島と口永良部島に分布していて、二ホンジカの分布域としては限られている。 他の二ホンジカに比べると体は小さいが、生息環境や生活の様子などは本州に分布するニホンジカなどとよく似ていて、低地から山地にかけての森林や草地、原野などに生息している。 ヤクシカの大きさ・特徴 ヤクシカの体つきは本州などに分布しているものと同じだが、体が小さいのが特徴で、体長は1~1.5m程度で、ニホンジカの中でも特に小さい。 台湾などに生息しているキョンなどに比べると大きいが、ホンシュウジカに比べるとかなり小さい。 また、体の大きさは生息地によって差があり、屋久島西部のものは特に体が小さいとされているが、東部にはより大きなものが生息しているとも言われている。 また、飼育下では大きくなる傾向があるように思われるが、体が小さいのは、島嶼部という限られた生息環境によるものとも考えられている。 同じ屋久島に生息しているヤクザルなども、本州などに分布しているニホンザルに比べると、やはり体は小さくなっている。 また、ヤクシカは体に対して四肢が短い特徴があるともされているが、毛色などは本州のものと同じで、夏毛は赤褐色や黄褐色などの地に白い斑が散在しているが、冬には灰色がかって斑は消失する。 角は他の二ホンジカと同じで雄だけがもっているが、ホンシュウジカやエゾジカの角が4本に分かれるのに対して、ヤクシカの雄の角はふつう3本に分かれているという特徴があり、長さも25~33cm程と短い。 この角は4~5月にかけて抜け落ちるが、すぐに新しいものが成長し、9~10月頃には完成する。 ヤクシカの生態・生活 生活の様子などは本州に分布するニホンジカなどと同じで、低地から山地にかけての森林や草地、原野などに生息していて、夏は標高の高いところで生活しているが、気温の下がる冬には低いところに降りてきて生活している。 普段は雌雄が別の群れをつくって生活していて、雌の群れには子どもや若い雄が含まれている。 成熟した雄は別の群れをつくって生活しているが、単独で生活しているものもしばしば見られる。 ヤクシカは昼夜共に活動するが、どちらかと言えば夜行性と言われていて、日中は森林内で休んでいて、主に早朝や夕方に採餌を行う。 食性は草食性で、木の葉や草類、種子などを食べるが、ヤクザルの群れの後をついて回り、落下果実なども食べる。 ヤクシカの繁殖・寿命 ヤクシカの繁殖期は秋頃に見られ、繁殖の様子なども他の二ホンジカとよく似ている。 繁殖期の秋になると、雄は角を突き合わせて争い、勝ち残った雄は縄張りをつくり、10頭程の雌とハーレムをつくるようになる。 しかし、その傾向は本州などに生息するものほど顕著でないとも言われていて、雄は必ずしも雌を囲い込まないとも言われている。 ヤクシカは限られた地域と環境の中で生活してきたため、体の大きさのほか、繁殖の様子なども独特なものになっているとも考えられている。 詳しいことは今後の研究が待たれるが、雌は春の5~6月頃には1産1子、稀に2子を出産する。 子どもには親の夏毛と同じように白斑が見られ、飼育下での寿命は15~18年程度と言われている。 ヤクシカの保護状況・その他 ヤクシカは、かつては海岸近くから標高の高い山地まで広く分布していて、1950年頃まではかなり多くの個体が生息していたと言われている。 しかし、乱獲のほか、近年の森林開発などによって、一時は生息数が激減した時期があった。 その後、保護政策などによって生息数は増加し、現在では十分な個体数が生息していると考えられている。 反面、個体数の増加に伴う農作物の被害や、自然植生や希少植物などへの食害が問題となっている。 尚、ニホンジカの亜種については未だはっきりと確定しておらず、国際自然保護連合(IUCN)などでは、ヤクシカをニホンジカの亜種として記載していない。 |
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