ミナミブタオザル

ミナミブタオザルさんのプロフィール

和名		ミナミブタオザル

分類		霊長目・オナガザル科

学名		Macaca nemestrina

英名		Southern pig-tailed Macaque / Sunda pig-tailed macaque

分布域		ブルネイやインドネシア、マレーシアやタイなど

生息環境		森林地帯など

体長		雄で50～58cm、雌で38～48cm程度

尾長		雄で16～25cm、雌で13～25cm程度

体重		雄で5～12kg、雌で4.5～6kg程度

IUCNによる保存状況評価 / 絶滅危惧種 (VU)

ミナミブタオザルはオナガザルの仲間で、体はニホンザルと同じほどの大きさがある。
半ば裸出した尾が、ブタの尾のように見えるのが特徴で、群れをつくって森林内で生活している。

●分布域・生息環境
●大きさ・特徴
●生態・生活
●繁殖・寿命
●保護状況・その他

ミナミブタオザルの分布域・生息環境

ブタオザルの仲間はバングラデシュ東部からインド北東部などを経て、ミャンマーからベトナムに至るインドシナなどのほか、中国南部やマレー半島、インドネシアのボルネオ島やスマトラ島などの東南アジアに広く分布している。

この内、本種・ミナミブタオザルはブルネイやインドネシア、マレーシアやタイなどに分布していて、シンガポールやナツナ諸島の一部にも人為的に導入されている。

ミナミブタオザルはスンダブタオザルとも呼ばれ、低地から山地の森林地帯に生息していて、主に熱帯雨林や湿地林などの森林地帯で見られる。

二次林や海岸近くの森林などにも生息していて、アブラヤシなどの耕作地周辺にも生息している。

ミナミブタオザルの大きさ・特徴

ミナミブタオザルはニホンザルと同じほどの大きさだが、雄の体長は50～58cm、体重5～12kg程であるの対して、雌は体長38～48cm、体重4.5～6kg程度で、体は雄の方がやや大きい。

しかし、雌雄ともに尾は短く、半ば裸出したブタのような細い尾をもっているのが特徴で、その様子から「ブタオ」と名前が付けられている。

四肢は比較的長くて、いずれにも5本の指がある。
爪はすべて平爪で、親指は他の指と対向していて、物をつかむことができる。

また、眉の部分は突き出ているほか、ニホンザルの様に、食べ物を一時のあいだ蓄えておくことができる頬袋をもっている。

毛色は黄褐色のような色をしていて、腹側は明るいクリーム色のような色で淡い色をしている。
顔周りや首、胸辺りの毛などは長くなっていて、頭頂部には黒褐色や黒色の短い毛があるのも特徴になっている。

目は明るい琥珀色をしているが、雄の犬歯は大きく、雌の倍近いの長さがある。

ミナミブタオザルの生態・生活

ミナミブタオザルは低地から標高2000m位までの熱帯雨林や沼地などがある湿った森林地帯などに生息していて、樹上生活と地上生活を半々ほどで営んでいる。

昼間に活動し、15～40頭ほどの群れをつくって生活していて、群れは複数の雌雄とその子どもたちから構成されているが、時には80頭ほどの群れになることがある。

行動範囲は1～3平方km程度、1日の移動距離は1.5～3kmほどと言われているが、食糧事情や群れの大きさなどによって幅がある。

また、行動範囲は他のグループと重なっていることが多く、時には群れ同士が争うこともある。

ミナミブタオザルはイチジクやドリアン、マンゴーやパイナップルなどの果実を中心に、木の葉や木の芽、キノコ、穀類など、主に植物質のものを好んで食べる。

果実類は食べ物の75パーセント近くを占めていて、時には果樹園を荒らすこともあるが、雑食性で、昆虫類のほか、雛鳥や鳥の卵、カニなども食べる。

ミナミブタオザルは地上性が強いと言われているが、採餌は樹上で行われることが多い。
また、大きな群れでは、採餌時にはしばしば2頭から5～6頭ほどのグループに分かれて行われる。

夜間は木の上で休むが、20mを超える高い木を好む傾向がある。
寝床は最後に採餌した場所から近い木を選ぶと言われているが、これは採餌場所から寝床までに襲われるリスクを最小限に抑えるためと考えられている。

外敵はスマトラトラやヒョウ、ウンピョウやドール、大型のアミメニシキヘビなどだが、一番の外敵は人間で、近年は森林の伐採や開発、農地への転用などによって生息地が減少していて、ミナミブタオザルの個体数も減少している。

また、シロテナガザルやフクロテナガザルとはしばしば生息地が重なっていて、外敵とはならないが、特にシロテテナガザルとは食料をめぐっての競合相手になっている。

このほか、ミナミブタオザルは比較的温順な性質なので、マレー地方などでは飼い慣らして、高いヤシの木などに上らせて、ヤシやココナツの実を採らせるようにしている。
その為、別名・ヤシザルやココナツモンキーなどと呼ばれることもある。

また、ほとんどの霊長類とは異なり、ミナミブタオザルは泳ぎも巧みで、水の中に入ることを厭わない。

ミナミブタオザルの繁殖・寿命

ミナミブタオザルは一年を通して繁殖し、決まった繁殖期は見られないが、1～5月の間には比較的多くの繁殖が見られると言われている。

繁殖は一夫多妻で行われ、雌も複数の雄と交尾する。
雌の平均した妊娠期間は172日前後で、ふつうは1産1子を出産するが、稀に2子を出産する。

生まれたばかりの子どもの体重は400～500g程で、毛色は黒い色をしている。
生後3ヶ月頃から親と同じような色になりはじめ、4～5ヶ月ほどで離乳するが、1年程の間は親と一緒に生活している。

子どもは1年を過ぎた頃には独立し、雌は3～3年半、雄は4～4年半程で性成熟する。
また、成熟しても雌は出生した群れの中に留まるが、雄は成熟する頃には群れを離れ、単独で行動するか、他の群れの中に入っていく。

ミナミブタオザルの野生での寿命は20～25年、飼育下では35年を超えるものも知られているが、およそ30年前後と言われている。

ミナミブタオザルの保護状況・その他

現在、ミナミブタオザルは国際自然保護連合（IUCN）の保存状況評価によって、絶滅危惧種(VU)としてレッドリストに指定されている。

主な原因は開発や森林伐採などによる生息地の減少で、それに伴い生息数も減少している。

また、森林が開発され、耕作地などに置き換わったところでは、トウモロコシやドリアン、パパイヤなどの作物を食べることから、害獣として駆除されることがあるほか、ミナミブタオザルは食用などを目的した狩猟や医学の研究動物としても捕獲されていて、それらも大きな脅威になっている。

尚、ブタオザルは、以前はミャンマーのエーヤワディー川(イラワジ川)上流やアラカン山脈に分布する北方系のものと、ミャンマー南部からマレー半島、スマトラやボルネオなどに分布する南方系のものに大別されていたが、現在はそれぞれが別種として認識されている。

北方のものはキタブタオザル(M. leonina)とされているが、ミナミブタオザルとの分布域とは明確な境界がなく、タイ南部の一部などでは両種の交雑が観察されている。

また、ミナミブタオザルからは更に2種が独立種として分類され、

Macaca pagensis (Pagai Island macaque)
インドネシア・スマトラ島西岸沖のムンタワイ諸島の固有種

Macaca siberu (Siberut macaque)
インドネシア・スマトラ島西岸沖のシベルト島に固有

として認識されている。

しかし、いずれも生息数が減少していて、キタブタオザルは絶滅危惧II類(VU)、M. pagensisは絶滅危惧IA類(CR)、M. siberuは絶滅危惧IB類(EN)として指定される状況になってしまっている。

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