インドタテガミヤマアラシは、南アジアから中央アジア、中東などに分布しているヤマアラシの仲間で、小さな群れで生活している。 名前のように、頭部から肩にかけての毛は長く、タテガミ状になっている。
インドタテガミヤマアラシの分布域・生息環境 インドタテガミヤマアラシは、南アジアから中央アジアにかけて広く分布しているヤマアラシの仲間で、中東にも分布している。 バングラデシュからインドやネパール、ブータン、スリランカなどのほか、パキスタンからアフガニスタン、イラン、イラク、更にイエメンからサウジアラビア、トルコにかけても広く見られる。 岩の多い丘陵地帯に多いが、草原やサバンナ、森林や疎林、二次林などにも生息していて、さまざまな環境に適応している。 インドタテガミヤマアラシの大きさ・形態 インドタテガミヤマアラシは、体長70~90cmほどの大型の齧歯類で、平均した体重は11~18kg程にもなる。 四肢が短く、体はずんぐりとした感じだが、四肢は幅広く頑丈で、穴を掘るのに適した長い爪をもっている。 また、嗅覚は優れているが、目は小さくて視力はよくない。 毛色は茶褐色や暗褐色、黒褐色などで、首の下辺りに月の輪のような白い模様が見られるものが多い。 アフリカタテガミヤマアラシと同様、頭部から肩にかけての毛が長くタテガミ状になっているが、背中や尾の毛は針状に変化している。 この針は特徴のある黒白のまだら模様で、長いものは50cm程にもなるが、硬いが軽い。 また、表面は滑らかだが、僅かに返しがついていて、ものに刺さるとなかなか抜けない構造になっている。 体からは抜けやすくもなっていて、外敵などに対する有効な防御手段になっている。 インドタテガミヤマアラシの生態・生活 インドタテガミヤマアラシは岩の多い丘陵地帯に多く見られるが、平地から山地にかけての草原やサバンナ、森林や二次林などにも生息している。 さまざまな環境に適応していて、ヒマラヤ山脈の標高2400メートル辺りでも見られる。 主として夜行性の動物で、昼間は地面に掘った穴や洞窟、岩の間や他の動物の古巣などで休んでいて、夕方から早朝にかけて活発に活動する。 ペアや家族単位の小さな群れで生活していて、主として草食性で、果物や穀類、木の根や球根などを食べるが、昆虫類やカエルなどの両生類なども食べる。 季節によってあらゆる種類の植物を食べるが、時にミネラル補給のため、動物の骨を齧ったりもする。 採餌するときは食べ物を押さえたり掴んだりして、前肢をうまく使って食べる。 一方、農作物も好むことから、生息域の多くの地域では深刻な農業被害を与えている。 また、詳しい行動範囲などは分かっていないが、インドタテガミヤマアラシは巣穴の近くに留まる傾向があると言われていて、採餌も巣穴から遠く離れた場所で行われることはないと言われている。 外敵はカラカルやトラ、ライオンやシマハイエナ、オオカミやリカオンなどの他、時にイリエワニに襲われることもある。 尾の針は空洞状になっていて、外敵が近づくと、尾を振ってカラカラというような音を発して仲間に知らせると共に、うなり声をあげて相手に警告する。 相手が更に近づいてくると、後ろ向きになって針を逆立て威嚇するが、それでも相手がひるまないと、針を逆立てたまま後ろ向きに突進する。 この攻撃方法は効果的で、相手にとって致命的となることもあり、成獣のトラが肺と肝臓を刺されて死亡した例も報告されている。 その為、外敵は多いが、実際に襲われることは少ないと言われている。 この他、インドタテガミヤマアラシは嗅覚に優れ、木登りは得意ではないが、泳ぎはうまい。 インドタテガミヤマアラシの繁殖・寿命 インドタテガミヤマアラシの繁殖期は地域によって差があるが、主に2~3月頃に見られる。 繁殖は一夫一婦で行われ、その関係は生涯の間続くと言われている。 巣は地面に穴を掘ってつくられるが、深さ1.5m、長さが18m程になるものもあり、2~3の出入り口が設けられている。 雌の妊娠期間は8ヵ月ほどで、1産2~4仔を出産する。 但し、遅延着床があるのか、雌の妊娠期間は4ヵ月程度とも言われていて、これについてははっきりしない。 生まれたばかりの子どもは体重500gほどで、目は既に開いている。 体も短くて柔らかい針で覆われているが、この針は数日の内には硬くなる。 離乳期間は13~19週ほどで、その後も性成熟する頃までは親と一緒に生活している。 雌雄ともに2年ほどで性成熟し、飼育下での寿命は27年を超えるものが知られているが、平均した寿命は20年程度と言われている。 野生下での寿命は分かっていないが、飼育下よりは短く、10~15年程度と考えられている。 インドタテガミヤマアラシの保護状況・その他 インドタテガミヤマアラシは分布域全体でよく見られ、現在のところ絶滅の恐れはないとされている。 農作物に被害を与えることから、害獣として駆除されることがあるほか、広い地域で食料して狩猟の対象にもなっているが、インドタテガミヤマアラシは食性も多様で、ある程度の環境変化にも適応できるため、個体数は安定していると考えられている。 尚、「ヤマアラシ」と呼ばれているものには、本種が属しているヤマアラシ科と、カナダヤマアラシなどが属しているアメリカヤマアラシ科があるが、互いに近縁な関係があるわけではなく、両種の分類学的系統はそれぞれ独立したものになっている。 |
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インドタテガミヤマアラシ