シフゾウは特徴のある体をしている偶蹄類で、一見してウシ科のレイヨウ類のように見える。 しかし、シフゾウはシカの仲間で、体の大きさはニホンジカよりも大きく、アカシカよりは少し小さい。
分布域・生息環境 シフゾウは中国の自然保護区に生息しているが、これらはヨーロッパの動物園で飼育されていたものを再導入したもので、真の野生下のシフゾウは、西暦200年頃に絶滅している。 元来の分布域は中国北東部や中東部と考えられていて、低地の湿地や湖沼、その周辺などに生息していたと言われている。 大きさ・形態 シフゾウの体長は180~220cm程で、体はニホンジカよりも大きく、150~210kgの体重がある。 毛色は、夏には赤褐色で短く、冬には灰褐色で長くなり、背中には黒っぽい縞が見られる。 頭部は長く、眼下線はよく発達していて、離れていてもよく目立つ。 四肢は長く、蹄は大きくて左右に広がっている。 また、尾もほかのシカよりも長い。 角は雄だけがもっていて、毎年12~翌年の1月頃にかけて抜け落ちるが、すぐに新しい角が生えはじめる。 この角は枝角で、5月頃には完全に成長したものになり、50~80cm程の長さがある。 また、雄の喉から首にかけてはタテガミや長い毛が見られる。 全体に特徴のある体つきをしていて、「蹄はウシに似ていて、首はラクダに似る。また、角はシカのようであり、尾はロバに似ている」ことからシフゾウ(四不像)と呼ばれるが、「角がシカで尾がウマ、鼻がウシで体がロバに似ている」などとも言われていて、この四つの動物については諸説がある。 いずれにしても、シフゾウは特徴のある動物だが、野生種は既に絶滅してしまっている。 しかし、現存しているシフゾウはヒトコブラクダのように家畜種として見られるのではなく、飼育していたものを再導入した形で残っている。 生態・生活 シフゾウは、1865年、北京の南苑で飼育されていたものを、英名にもなっているフランス人宣教師であるダビット神父が見つけたとされるが、その時には既に野性のシフゾウは絶滅していたとされていて、野生状態での分布域含め、生態や生活状態など、詳しいことはわかっていない。 南苑で飼育されていたものは、その後、群れの中から12頭ほどの個体がヨーロッパに持ち込まれ、飼育下で数を増やしたが、中国で飼育されていたものは1894年の運河の洪水と、1900年の義和団の乱のために絶滅している。 中国で現在生息しているものは、1985年にヨーロッパから更に再導入されたもので、元来の分布域などは分かっていないが、中国東北部から中央部辺りにかけて分布していたのではないかと考えられている。 この様な状況は、モンゴルや新疆ウイグル自治区などの保護区に少数が生息しているモウコノウマも似ているが、シフゾウの再導入は、さらに複雑な経緯を経ている。 生態や生活状態などについても元来の様子は分からないが、再導入された半野生状態のものは、群れをつくって生活している。 この群れは、繁殖期以外は雌雄が別のものをつくって生活している。 また、シフゾウは草類を主に食べるが、水生植物も好んで採食する。 蹄は大きく、湿地にも適していることなどから、野生状態ではアフリカに生息しているシタツンガのように、河川や湖沼などの周辺を好んで生息していたのではないかとも言われている。 実際、ほかのシカ類とは異なり、シフゾウは水に入ることを厭わず、泳ぎもかなりうまい。 繁殖・寿命 野生での詳しい繁殖の様子なども分かっていないが、一夫多妻で、繁殖期の雄は、他のシカ類のように雌をめぐって激しく争う。 雌の妊娠期間は270~300日程で、1産1~2子、普通は1子を出産する。 生まれたばかりの子どもの体重は11~13kg程度で、4~5月に生まれている。 子どもには他のシカの子どもように斑点が見られ、10~11ヵ月程度の授乳期間がある。 雌雄共に2年を過ぎた頃には性成熟すると言われているが、14ヵ月程で成熟するとも言われている。 飼育下での寿命は23年を超えたものが知られているが、平均すると15~20年程度だろうと考えられている。 また、外敵はトラやヒョウなどであったと考えられているが、これについても詳しいことは分かっていない。 保護状況・その他 シフゾウは国内の動物園でも飼育例の少ない珍しい動物だが、1985年頃から中国に再導入されたものは、徐々に個体数を増やしているとも言われている。 尚、シフゾウは国際自然保護連合(IUCN)の保存状況評価によって、現在、野生絶滅種(EW)としてレッドリストに指定されている。 |
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シフゾウ
(おそらく中国東北部から中央部辺り)