トウブハイイロリスは北アメリカに分布している樹上性のリスの仲間で、アメリカアカリスなどに比べると、体はかなり大きい。 名前のように、毛色は灰色をしているが、黄色を帯びたものや茶褐色のものなども見られる。
トウブハイイロリスの分布域・生息環境 トウブハイイロリスはカナダの中南部からアメリカ合衆国東部や中西部などに分布している。 主に広葉樹林などの森林地帯に生息しているが、人の生活環境にもよく適応していて、耕作地のほか、住宅地や樹木のある都市部の公園などにも生息している。 また、ヨーロッパの幾つかの国などにも移入定着していて、在来種などへの影響が心配されている。 トウブハイイロリスの大きさ・形態 トウブハイイロリスはやや大型のリスで、23~30cm程の体長がある。 北アメリカの北部に分布しているアカリスなどに比べてもかなり大きく、体重も400~600g程の重さがあり、大きいものだと体重が800gを超えるものも見られる。 前足には4本、後ろ足には5本の指があり、尾はふさふさとしていて、体長と同じくらい長い。 毛色は、名前のように灰色をしているが、黄色を帯びた灰色や茶褐色のものなども見られる。 しかし、腹面は白っぽく、耳にふさ毛は見られない。 トウブハイイロリスの生態・生活 他の樹上性のリスと同じで、トウブハイイロリスは森林地帯に生息しているが、広葉樹林の森などに多く見られる。 しかし、環境への適応力に優れ、耕作地の周辺や、近年では住宅地や樹木の多い都市部の公園などにも生息している。 日中に活動し、特に早朝や夕暮れ時には活発に活動する。 普段は単独で生活しているが、食料が豊富な所では小さな群れをつくることもあり、ドングリやクルミ、木の芽や樹皮などを食べる。 巣穴は樫の木につくることが多く、その実を好んで食べるとも言われているが、樹皮の下の樹液を含んだ組織なども好んで食べる。 雑食性で、昆虫類やカエルなどの両生類のほか、鳥の卵やヒナを食べることもあるほか、時には耕作地で穀類やトウモロコシを食べたり、養鶏場で鳥の餌を食べたりすることもある。 また、ミネラルが不足すると動物の骨や角などを齧ったり、土を食べたりするほか、積雪のある地域では、冬には雪を食べて水分補給をしたりする。 木登りはたいへん上手だが、採食の全体は地上の場合が多いとも言われている。 行動範囲は0.004~0.02平方kmと幅があり、環境や食糧事情などによって変化するが、雄は雌よりも広い行動範囲をもっている。 樹上での動きは敏捷で、2m程の間なら簡単に跳ぶことができ、地上でも時速30kmほどで走ることもできる。 泳ぎも巧みで、1.5km程の距離を泳ぐことができるとも言われている。 巣は土を掘ったりするのではなく、樹上につくられる。 地上から5~6m以上の高さのところに球形のものがつくられるが、トウブハイイロリスは体が大きいこともあり、直径30~60cmほどの大きなものをつくる。 しっかりとした木の股に小枝や木の葉などを用いてつくり、行動範囲の中に2~3の巣をもっていると言われている。 気温の下がる冬には、樹洞や家屋の屋根裏などに巣をつくることもあるが、トウブハイイロリスは冬でも活動し、冬眠することはない。 寒さが厳しくなると数日の間は巣に留まることがあるが、冬季に備えて土中に食物を貯蔵することも知られている。 外敵はワシやタカ、フクロウ等の猛禽類のほか、アライグマやキツネ、コヨーテやボブキャット、イタチや大型のヘビなど、外敵は多い。 危険が迫ると鋭い鳴き声を上げて仲間に知らせ、素早く身を隠す。 時には使われなくなった鳥の古巣などに逃げ込むことがあるが、動きが敏捷で、捕食されることは少ないとも言われている。 トウブハイイロリスの繁殖・寿命 リスの仲間は、通常年に1回の繁殖だが、トウブハイイロリスは春と秋の2回繁殖することもある。 繁殖期は12~翌年2月頃にかけて見られるが、一部のものは5~6月頃にも繁殖することがある。 また、若い雌はふつう春に1度の繁殖だが、食糧事情にもよるが、成熟した雌は夏にもう一度繁殖することが多いとも言われている。 繁殖は一夫多妻で行われ、巣は樹上に球形のものがつくられる。 雌の妊娠期間は44日前後で、1産1~6子、ふつうは3~4子を出産する。 生まれたばかりの子どもの体重は13~18g程で、目は閉じている。 生後5週間ほどで目が開き、10~12週間ほどの授乳期間がある。 その後独立していくが、秋に生まれたものは、母親と一緒に冬を越すことが多い。 雌雄ともに1~2年で性成熟し、寿命はリスの仲間ではかなり長く、飼育下では20年程も生きると言われている。 野生下での平均した寿命は5~6年程度言われているが、長いものでは12年ほどの寿命をもつものもいる。 トウブハイイロリスの保護状況・その他 トウブハイイロリスは分布域内ではふつうに見られ、現在のところ絶滅の恐れはないとされている。 環境への適応力に優れていて、近年は都市部の公園でも見られ、生息域を広げているとも言われている。 一方、元来の分布域は北アメリカだが、1876年頃にはイギリスに移入され、その後イタリアや南アフリカ、オーストラリア、アイルランドなどにも移入されている。 移入先でも環境によく順応し、都市部などにも定着していて、公園などで人の手から餌をもらっている姿が見られる。 しかし、ヨーロッパからアジアにかけてのユーラシア大陸に分布するユーラシアリスに比べても体は大きく、在来のリスを圧迫している状況にもなっている。 また、農作物に被害を与えたり、家禽の卵を食べたりするほか、人家に入り込んで電気コードなどを齧ってしまうような問題も発生している。 国内には移入定着していないが、二ホンリスなどの在来種の保護を重視し、トウブハイイロリスはアライグマやヌートリア、キョンなど共に特定外来生物に指定されている。 尚、トウブハイイロリスには次の亜種が認識されている。 Sciurus carolinensis carolinensis S. c. extimus S. c. fuliginosus S. c. hypophaeus S. c. pennsylvanicus |
|
●リス科の動物へ ●このページの先頭へ |
Private Zoo Gardenは、国内の動物園で会える動物たちを紹介している、インターネット動物園です。 今後とも園内の充実を図っていく予定ですので、動物図鑑や写真集などとして、是非利用してください。 |
トウブハイイロリス