ケープハイラックスは、外見がウサギなどに似た感じがする小型の哺乳類で、英名のままロックハイラックスとも呼ばれている。 単にハイラックスとも呼ばれ、時にイワダヌキなどと呼ばれることもある。
ケープハイラックスの分布域・生息環境 ケープハイラックスはコンゴ盆地とマダガスカルを省くアフリカのほとんどと、アラビア半島に分布している。 乾燥した岩地やサバンナ、低木林などに生息していて、生息範囲にはナミブ砂漠、サハラ砂漠、アラビア砂漠の乾燥した山岳地帯も含まれている。 ただ、アフリカでの分布域は北部と南部に分かれていて、北部ではモロッコや西サハラでは見られず、概ねモーリタニアから西アフリカ、ナイジェリアを経て、チャドからエジプト、ケニアなどにかけて、アフリカ大陸を東西に横断するように分布している。 アフリカ南部ものはナミビアから南アフリカ共和国、ジンバブエやマラウイ、モザンビークなどに分布していて、ガボンやコンゴ共和国のほか、内陸部のザンビアなどでは見られない。 しかし、アンゴラ南西部やコンゴ民主共和国北部、タンザニア北部やボツワナ南東部などでは一部の地域に生息している。 ケープハイラックスの大きさ・特徴 体の大きさはウサギ程度で、雄の平均した体重は4kg、雌では3.6kg程度で、体は雄の方が少し大きい。 四肢は短くて、尾はほとんどなく、全体にずんぐりとして感じがするが、体つきはがっしりとしている。 前足に4本、後ろ足に3本の指があるが、歩く時は、前足は足の裏を地面につけるが、後ろ足はつま先だけで、踵は地面に付けずに歩く。 また、足の裏には黒いパッドがあり、岩場などを移動するのに適したつくりになっている。 雌雄ともに体毛は短くて粗く、密生している。 毛の色には変化があるが、灰色や黄褐色、茶褐色などをしていて、ふつうは背側が暗く、腹側は淡い色をしている。 また、毛の色は、湿潤な地域に生息するものは濃く、乾燥した地域のものは淡い色をしている傾向がある。 ところで、ハイラックスの仲間は、外見がウサギなどに似た感じがするが、足には蹄に似た平爪があり、原始的な有蹄類との関係が認められる動物とされている。 この為、ハイラックスは外見からは程遠いが、ゾウに近い動物と考えられている。 また、上顎の門歯は牙のようになっていて、雄の牙は雌よりも大きく鋭くなっている。 この上顎の門歯は無根で一生のび続けるが、下顎の門歯はある時点で成長が止まってしまうということでもウサギの仲間などとは異なっているほか、前臼歯と臼歯には表面にうねがあるのが特徴で、サイの歯に似ているとされている。 この他、ハイラックスの背側には背腺と呼ばれるフェロモンを分泌する腺があることも特徴になっていて、これは岩にマーキングしたり、子どもに臭いを付けるために使われると考えられている。 ケープハイラックスの生態・生活 ケープハイラックスは主に岩地やサバンナ、低木林などに生息しているが、砂漠や半砂漠のような乾燥した環境を好む傾向にある。 また、熱帯雨林にも生息しているほか、山地でも見られ、ケニアでは標高4300m程の高地でも発見されている。 群れで生活する群居性の動物で、数頭から数十頭の群れをつくって生活しているが、時には群れ同士が集まって80頭を超える大きな集団をつくることもある。 群れの最小単位は1頭の雄と複数の雌、その子どもたちからなる家族単位で、ひとつの群れは数家族から形成されている。 巣穴は植物の生える岩の割れ目や空洞などを利用するが、ミーアキャットやツチブタなどが使い終えたものを利用することもある。 主として昼行性で、特に午前や夕方には活発に活動するが、月明かりがあるときなどは夜間も活動することがある。 食性は植物質のものを食べ、草や樹皮のほか、木の葉や木の実、果実や花、苔類など、ケープハイラックスは季節に応じて様々な植物質のものを食べる。 糞はタヌキなどのように同じ場所でする習性があるが、これが縄張りを主張しているのかは分かっていない。 また、採餌のために移動する時には、岩穴や茂みなど、身を隠す場所があるところから離れることはない。 主に地上で生活するが、ケープハイラックスは木登りも巧みで、樹上でも敏捷に動きまわる。 視覚や聴覚が優れているほか、驚いたりすると鋭い鳴き声をあげ、岩の割れ目などに素早く逃げ込む。 ところで、ケープハイラックスは採餌以外の時間は、群れで休んでいることが多いが、これは他の哺乳類に比べて体温調節の能力が劣るためとされている。 早朝や夕暮れ時などの気温の低いときには日向ぼっこをして体温を保温し、日中の暑い時は日陰で体を冷やすなどしているが、この行動は体温調整するためと考えられていて、この様子は動物園などでもよく見られる。 外敵はカラカルやサーバルキャットなどだが、ケープハイラックスの上門歯は鋭く、時にはこの牙で攻撃を加えることもある。 しかし、体が小さいこともあり、ジャッカルやライオン、マングース、ヘビやフクロウなど、外敵は多い。 ケープハイラックスの繁殖・寿命 ケープハイラックスは一夫多妻で、繁殖期は地域によって異なるが、出産は雨季の間に見られる。 この時期の雄は強い縄張りを主張し、4,000平方メートルほどの範囲に3~7頭の雌からなるハーレムを形成する。 雌の妊娠期間は小型の哺乳類としては長く、妊娠期間は6~8ヵ月程にもなる。 雌は1産1~6子、普通は2~3子を出産する。 子どもはよく発達して出生し、出産直後には目は完全に開いていて、毛も生え揃って産まれてくる。 生まれたばかりの子どもの体重は170~240g程だが、生後2日でジャンプもすることができる。 雄が育児にかかわっているかは分からないが、子どもは生後2週間程で固形物を食べはじめるようになり、離乳は3ヵ月程で完全に完了する。 雌雄ともに16ヵ月程で性成熟し、3年程で親と同じ大きさになる。 雄はこの頃までには独立していくが、ふつうは性成熟した頃には群れを離れていく。 飼育下での寿命は10~15年程度、野生下では8~12年ほどで、平均すると10年程度と言われている。 ケープハイラックスの保護状況・その他 ケープハイラックスは分布域が広く、生息数も多いと考えられていて、現在のところ絶滅の恐れはないとされている。 しかし、肉を目的とした狩猟が分布域全体に渡って行われていて、地域によってはほとんど見られなくなったところもある。 イスラエルでは生息数が少なく保護動物に指定されているが、分布域全体の生息数がはっきりとは分かっていないこともあり、今後の個体数の動向に注意が払われている。 尚、ケープハイラックスは分布域が広いこともあり、次のような亜種に別けられている。 ただ、亜種は独立種として扱われることもあり、今後の研究が待たれる。 Procavia capensis capensis 南アフリカ共和国とナミビアに分布する基亜種 P. c. habessinicus アフリカ北東部とアラビア半島 P. c. johnstoni 中央・東アフリカに分布 P. c. ruficeps サハラ砂漠南部 P. c. welwitschii ナミビア北部の沿岸域 |
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